ゲスの極みカズヤ

草食系男子の定義とは何か。

私が想像するに、とって食えそうな獲物を目の前にしても知らんぷりをしたり、気になる相手にアプローチできない、もしくは「しなくていっか」という男性のことではなかろうか。肉を喰らうようなガツガツ感が見受けなれない男性。

そんな草食系男子代表のような友人、カズヤ(仮)を紹介しよう。

男女に友情は成立するか否かについて、私は成立すると思う。それは一瞬で、どちらかが恋愛対象として相手を意識してしまうこともあるかもしれないけれど。

彼は学生時代からの友人で、もう10年以上の付き合いになる。

お互いの家を行き来したことも、同じ部屋で寝たことも幾度もあるが、間違ってヤッてしまった、なんとなくキスしちゃった、実は秘めた想いがある、ということは全くない。気配もないし、「ソノ気がまったくないですよ」というオーラをどちらもなんとなく発している。

お互い恋愛相談もよくしてきた。不可解な男性の言動について、冷静かつ的確に助言をくれていたのは彼である。

そんなカズヤに、女友だちを紹介したことがあった。

ちゃんと仕事をしていて適度にお酒を飲み、休みの日はそこそこ出歩き、極端に理解しがたい趣味はなく、音楽や映画も程よく嗜むバランスのいい男性。洋服もシンプルで趣味もいい。性格も落ち着いていてうるさくもなく、冷静で頭もキレるが冷たい印象はないカズオくん。やややせ型で身長は170cm以上。

これを書きながら、なぜこんな男性に自分はホレないのか不思議であるが、極端に理解しがたい趣味をもつ私の琴線には触れないのだ。仕方ない。

そんなカズヤと女友だちは、すぐに仲良くなった様子。そこで意外なことを聞くようになった。

「すごく家に来たがるんだよね」

草食系に見えるカズヤも男だったんだな。そうだよね。なんか安心したな。2人がうまくいくといいな。

映画を観たい

手料理が食べたい

家でのんびりしたい

パソコンの配線見ようか?

電球変えようか?

タバコ吸ってから帰っていい?等

女性の家に上がるために、こういったことを言ったことがある男性は少なくないだろう。

これらの文言はもはや東京レトロであり、使い方によっては古くさい人と勘違いされないので、家に上がる口実を私なりに考えてみた。

・最近、手品を練習してるからぜひ披露させてもらえる?まだ自信がないから外ではちょっと……。

・外で口から国旗を出すと片付けが大変なんだよね。

・剣を飲み込みたいんだけど、外でやると銃刀法違反になるんだ。

・味噌ソムリエの資格を取ったから、勉強のためにキミの家の味噌を少し食べさせてほしい。よければ保管方法についてアドバイスするよ。

・キミの家の周りの水道管をチェックしたら錆びていたけど大丈夫?すぐに水質調査が必要だよ。

など、ご検討くださいませ。

カズヤの話に戻します。

結局家に入れたんだか入れてないんだか忘れてしまったが、2人は付き合うことになった。意外な話を女側から色々聞いた。出会ってからそれまで、私はカズオがいわゆる草食系だと思って疑わなかったが違うらしい。かなりガツガツ前のめりらしい。

それは私の友人にホレだということかも知れぬからまあいいか。いいことではないかと思っていた。

だがしかし、間も無くして2人は解散した。双方から理由は聞いたけれど、よくわからなかった。私がちゃんと話を聞いていないか、カズヤ&女友だちにプレゼン能力がないかが原因だ。おそらく前者だ。

そんなカズヤにはすぐに彼女ができた。光の速さである。その後、次々と別の女の話題が出てきて、いつからか把握が困難となった。

あんた、平成の大宰治だな。

二股や乗り換えキャンペーンもめずらしくなく、最初は楽しく聞いていたカズヤの話だが、やっていることはゲスの極みであった。

見た目がギラついていると「してやられまい」と女側も警戒するってもんだが、カズオのふんわりとした見ため&穏やかな物腰から草食系と捉えて油断する女性は多いだろう。

ふわふわしてそうだから触れてみたらトゲがあって、気付いた時には血まみれキズだらけになるのだ。

おそロシア!

カズヤから不特定多数の名前がでてきて把握しきれなくなったのと時を同じくして、私の仕事がギュッと忙しさを増したため、一時期連絡を取らなくなった。

その2〜3ヶ月後、こんなメッセージが送られてきた。

「同棲することになった!なりゆきで!」

その瞬間、もうこれしか言えなかった。

「誰と?」

続く

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